生田でのくらしと全国一宮めぐり

星宿山王禅寺 〜甘柿発祥の地〜

王禅寺 ねこ

川崎市の麻生区、駅という駅から遠いエリア、新百合とあざみ野の中間よりも新百合寄に王禅寺という町がある。その町名の元となったのが星宿山王禅寺。
禅とついているが真言宗の寺である。

柿生の琴平神社本殿から住宅街に沿って山を登る道をしばらく進むと峠を越える。
しばらく下っていると左側にお寺の入口が現れる。
一見してそれとわからない簡素極まりないものだ。

王禅寺 入口
王禅寺の入り口

門柱に確かに 星宿山 王禅寺 と書かれているが、境内とは思えない不安な雰囲気である。
野趣溢れる道を進む。お寺というか何かの遺跡のようである。足元も悪い。

王禅寺 参道
王禅寺 参道

不安に思いながらも階段を登ってやっと境内っぽいエリアに到着する。

王禅寺 薬師如来堂
薬師如来堂

小さな門を抜けると、いい雰囲気のお堂がある。火灯窓と云い、扁額と云い山寺のお堂は斯くあるべしといった趣だ。薬師如来像が安置してある。

本堂というのだろうか一番立派な建物の前に柿の木が生えている。禅寺丸柿の原木だ。

禅寺丸柿

全国的な知名度は無いが、川崎名産の柿である。(元名産と云った方が正しいか)
柿生という地名はこの柿に由来する。
日本史上初の甘柿ということで人気を博したそうだ。しかし戦後になると、より甘くより大きい品種に取って代わられ市場から消え去った。

本堂の近くに「禅寺丸之記」が建っていて、この甘柿の発見から地域の名産になるまでの経緯を教えてくれる。ちょっと長いが一部引用する。

〜前略〜
応安三年久良岐郡金沢称名寺塔頭延命院住僧等海上人勅命ニヨリ再興セントシテ資材探索中寺領ノ山中ニ於テ紅熟セル柿ノ果実ヲ発見其ノ甘味豊潤ニシテ他ニ類例ヲ見ズ依テ寺庭ニ移植シ更ニ近在ノ人々ニ栽植ヲススメ王禅寺丸ト命名セリ下ツテ江戸幕府創立後ハ市場ニ多ク出荷サレ競賣ノ砌王ヲ略シテ禅寺丸ト称スルニ至ツタノハ元禄時代ノ事ト伝エラレル 〜後略〜

禅寺丸之記

地名の由来にもなったかつての名産品だが、自治体が普及に力を入れている様子はなく、私は川崎市民であるが食べたことがない。どころか見たこともない。是非とも食べてみたいものだ。